今年初、引出窯からの引出し

2018年2月21日(水)夜、多治見市市之倉町にある幸兵衛窯にお邪魔してきました。

というのもこの日、引出しがあると聞いたのです。引出窯で焼成したやきものを取り出す作業です。前日の14時頃に火入れをして、夜通し窯に薪をくべて、翌日18時過ぎに引出し開始です。

伺った時は、引出しの頃合いを見計らっている最中でした。

幸兵衛窯

そして、おもむろに装備を身に付けはじめた八代目 加藤亮太郎氏。なにしろ、窯の温度は1150度です。窯の中は、高熱と眩しい光の世界。なので、完全防備で窯からやきものを取り出します。

幸兵衛窯

窯から出した瞬間のやきものは、まさに光の塊です。それを棚板の上に載せると、少しずつ色に変化が起こりました。

最初に、茶碗の口縁部分の色が濃くなり、それは少しずつ胴に広がっていきました。けれども、高台はその間も光を放っていて、棚板に反射する光が、息を飲むほどに美しかったです。

幸兵衛窯

また、最初は無音の光の塊だったやきものが、少しずつ色を変えるうちに、音を立てはじめるのです。それは、はじけるような高らかな音。茶碗が冷えて、貫入(かんにゅう)が入る音です。

この音を、八代目は「産声をあげている」とおっしゃっていました。ご自分の手で作りだしたやきものだからこその目線だと思いました。この日、取り出していたのは、瀬戸黒のやきものでした。

じっと、眼差しをむけます。

幸兵衛窯

今回、はじめて引出しの様子を見せていただきました。なので、新鮮な驚きがたくさんありました。特に、窯から取り出した無音の光の塊がこの地に降り立って、音を奏ではじめるその様子には陶酔しました。

そして、この地(多治見)では1300年以上もの間、こんなふうにやきものを焼いてきたのだなぁ…と、時空の広がりを感じたのでした。お邪魔させていだき、ありがとうございました!!

幸兵衛窯
多治見市市之倉町4-124
TEL:0572-22-3821
※掲載した内容は、投稿時のものです。最新の情報は、幸兵衛窯HP等でご確認くださいね。

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